神様がくれた1週間<4日目> ・・・’18.9.4のこと。
↓前回です。ひよりの最後の食事がバリウムになってしまったことを悔やむ私のために、ひよりが自らちゅーるを食べてくれました。
私を見上げる愛しい"ふわふわ"
起床すると、ひよりはリビングにいた。夜中のうちにおしっこが出ている。下痢をして以来、便は出ていない。尿をよくみてみと、ストルバイト結晶のキラキラは見えない。膀胱炎と診断されてから(副作用のため)薬も飲めなくてずっと気になっているけど、膀胱炎は治ったんだろうか?分からない・・・。
今朝も朝の支度中、リビングにいてくれた。ひよりのトイレの掃除をしていると、ひよりが「にゃー」と鳴きながら近づいてくる。ああ、ひよりが私を見て鳴いている。なんてかわいいんだろう。なんて幸せなんだろう。私の愛しいふわふわ。
トイレに入りたいのかと思い、掃除をさっさと済ませてひよりをトイレに入れてみる。
でも違ったようで すぐに出てきて、また私を見上げて「にゃー」と鳴く。ああ泣けるくらいかわいい・・・。元気だった時は当たり前の”かわいい”だったけど、今は神々しく、奇跡ように”かわいい”。ひよりが「にゃー」と鳴くことがこんなに有り難いなんて。
”お腹がすいた”の幸せ
もしかして、何か食べたいのかな?
”お腹がすいた”という感覚があること。なんて幸せなこと。
昨日と同じようにちゅーるを指に取って鼻に近付けてみる。ふんふん匂いを嗅いだ後、美味しそうに食べてくれた。嬉しくて次々と指に取って舐めさせる。昨日と同じくらいの量だから大丈夫だよね、と思った時、ひよりが軽くえづいた。
「しまった!」と思った時にはもう遅く、ひよりは弱々しくえづいて嘔吐してしまった。私が調子に乗ったせいだ。申し訳なくて謝りながら泣けてしまう。嘔吐の量は少なく、直径5センチくらいのを2度。黄色い胆汁らしきものが混じっていた。
少量だったけれど ひよりも久しぶりの嘔吐にショックを受けた様子で、テーブルの下にうずくまってしまう。このまま また悪い状態に逆戻りかとオロオロしてしまったが、夫が仕事に出かけるころには明るい表情になっていて、「ひより」の呼びかけに「にゃー」と答えてくれた。よかった…ビックリした。
「ひよちゃん、ひざ?」と誘うと乗りたそうに近付いてきてくれたので そーっと抱き上げ、今朝もひよりをひざに乗せて 夫に「行ってらっしゃい」をした。
ひざの上で「行ってらっしゃい」
近づく台風
ひよりは今日も体調は悪くなさそうで、リビングで過ごしてくれた。時折カリカリマシーン(自動給餌器)のところに行くので、食べたい気持ちがあるんだと思い、シーバスープをあげてみる。固形物はやっぱり嘔吐が心配。スープならと思い準備する。
ひよりはふんふんした後、少しだけ飲んでくれた。
今日は台風が接近する予報。風の音が激しい。ガタガタする音にひよりと2人でビクビクしながら過ごす。このガタガタがひよりのストレスになりませんように・・・。
ひよりは世界一のビビリ。風の音がガタガタいうたびに、耳をピクピクさせて目をまんまるにして辺りを見回し、体を硬くする。ひより大丈夫だよ。家の中にいれば安心だからね。
台風が直撃しないうちに買い物を済ませなければ。ビクビクしているひよりを一人で留守番させるのは心配だったが、急いでスーパーに行くことにした。
期待のちゅーる
スーパーで「総合栄養食 まぐろ 海鮮ミックス味」と、「 エナジーちゅ~る まぐろ 海鮮ミックス味 」を見つけて購入。ひよりはちゅーるが大好きだし、これで栄養やカロリーが取れるならバンバンザイ!!
大きな期待をかかえながら急いで帰宅し、早速ひよりに総合栄養ちゅーるをあげてみると・・・食べない。じゃあエナジーちゅーるはどうだろう・・・食べない。
どうやら今までのちゅーるとは味が違うようだ。栄養やカロリーが取れる!と期待が大きかっただけにがっかりした。
そろそろ水も飲んでくれないと脱水症状が気になる。ブドウ糖入りの水をすすめてみても、ひよりは顔をそむけてしまって飲む気はない。残念…だけど無理強いはしない。ひよりが飲まないってことは、きっと ひよりにとって必要が無いってことなんだ。
夕方、ひよりが甘えたい様子だったので、 ソファに座ってひざに誘うと自分から乗ってきてくれた。体力のない体で自分からソファに飛び乗ってまで、甘えたいと思ってくれたんだ・・・。もう何もかもが奇跡に思えて胸がいっぱいになる。
そのまま長い時間を過ごした。ソファを立つ時はひよりを抱っこして移動。ずっと一緒にくっついて過ごした。
ソファに乗ろうとしているひより
カレーの匂いが好き
夫が帰宅した時、物音に驚いたのか ひよりはクローゼットに移動。しばらく閉じこもっていたが、作っていたカレーの匂いにつられて出てきた。ひよりはカレーの匂いが好き。もちろん食べることは無いが、カレーの匂いにはマタタビに似た反応をする。元気だった時と同じ反応をしてくれることが嬉しい。
食べたい気持ちはある様子で、カリカリマシーン(自動給餌器)の自分のお皿を見に行ったりしているので、ちゅーるやシーバ、きゅうりなどを用意して並べてみるが、何も食べなかった。
もしかしたら、夜中のうちに何か食べたくなるかもしれない。
今夜は、ちゅーるやきゅうりの他にシーバスープ、あとはウェットフードをすり鉢でペースト状にしたものなど、いくつか用意して眠ることにした。
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【後記】
この日、吐いてしまったひよりを見て、また吐き気の日々が戻って来てしまった、薬の日々が戻って来てしまった…と思い愕然としました。その吐き方も弱々しくて、体に力が残っていないような印象で とてもショックな光景でした。ひよりもショックを受けた様子を見せていて、そのことにも落ち込みましたが、その後すぐに穏やかな時間が戻って来て、ああ まだ神様はひよりを見捨ててない...と、ホッとしました。
下痢をして以来、うんちは出ていませんでした。バリウムが出ない事を心配していましたが、手術後の下痢の写真をもう一度見直してみると(病気が分かってから、うんちの写真は毎回撮るようにしていました。) 茶色に白が混ざったような色でした。きっとこれがバリウムなのだろうと思います。人間みたいに分かりやすく白いものではありませんでした。。。
(’19.1.17)
神様がくれた1週間<3日目> ・・・'18.9.3のこと。
↓前回です。ひよりは下痢をしてしまったものの、ブラッシングの時に「にゃー」と元気な声を聞かせてくれました。
初めてのスリーショット
夜中にひよりのトイレの音で目が覚める。下痢ではなくおしっこ。良かった。
その後はずっとリビングにいたようで、起床してみると ひよりはまだソファーの足元で眠っていた。ゆっくり寝ているように見える。
朝ごはんの支度中もリビングでくつろいでくれている。
今朝もソファでだっこをするとゴロゴロと喉を鳴らしてくれた。
ひよりと夫と私、3人で写真を撮った。そういえば3人で写真に納まったことなんて今まで無かったかも。貴重なスリーショット。
結局 今日もひよりと私は、ソファに座ったまま 夫に「行ってらっしゃい」をした。
ひよりはゆったりと気分は悪くなさそうだが、昨日から水分を摂っていないことが気になっている。お皿に水を汲んで口元に持っていてみるが、飲みたい様子はない。脱水症状が心配になる。
3ショットのスナップ写真。夫のアップが見苦しいので半分だけ。
幸せな昼下がり
午後、一緒に転がって昼寝をした。至福の時間。幸せをかみしめる。
夕方、昼寝から目覚めて一緒に窓の外を眺めた。貴重な時間をちゃんと覚えておきたくて動画を撮った。
おかかスープを作り、ダメ元で口元もっていき、匂いを嗅がせてみる。ふんふん匂いは嗅いでくれたが、飲んではくれなかった。無理強いはしないと約束したので、さっさと引き下がる。
次にダメ元でちゅーる。
吐き気が無いことを確認して、鼻に近づけてみる。
ひより、ふんふんふんふん...匂いを嗅いだ後、ペロッ。
はっ!舐めた!舐めてくれた!
偉大な子
嬉しくて何度も何度もちゅーるを指に取って舐めさせる。
美味しいものを ひよりが味わって食べている。何とも言えない感謝の気持ちと涙がこみ上げる。またひよりが、自分から食べてくれる日が来るなんて・・・。
私が、ひよりの最後の食事がバリウムになってしまったことを悔やんで、ずっと泣いてばかりいたから気遣ってくれたんだね。ちゅーるを食べる姿をこうやって見せてくれたんだよね。涙が止まんないよ。
なんて偉大な子なんだろう。ひより、ありがとう。ありがとうね。
だけど・・・あんまり食べると吐いちゃうかもしれない。泣きながら ちょっと心配になる。
でも、ひよりの方から程ほどで切り上げた。ちゃんと分かっているんだね。
9/3 ヒザでくつろぐひより。
きゅうりのおねだり?!
キッチンで夕食の準備をしながら、帰宅した夫にちゅーるの事を伝えて一緒に喜んでいいると、ひよりがキッチンへやって来た。
ひよりがキッチンへ来るなんて いつぶりだろう?!
ちょうどきゅうりを切っているところ。ひよりはきゅうりが大好きだけど・・・まさか?きゅうり!? きゅうりをねだりに来たの?!
夫もキッチンへやってきたので、きゅうりを小さく刻んで夫の手に乗せてみる。
ひよりはきゅうりを美味しそうに舐めていた。固形物だから飲み込む事を心配したけれど、ひよりはちゃんと分かっている。舐めるだけで食べることはしなかった。
続けてちゅーるを夫の手に乗せてみた。ひよりはちゅーるも美味しそうに舐めてくれた。
夫は久しぶりに ひよりの舌の ざりざりした感触を味わって、幸せを噛みしめているようだった。
またも ひよりは程ほどで切り上げ、クローゼットへ。今夜はクローゼット眠るようだ。
今日はなんていい一日だったんだろう。昼寝をしたり、動画を撮ったり、おやつを食べたり・・・夢のようだった。
ひよりに「おやすみなさい。また明日ね。」の挨拶をして、私たちも眠りに就いた。
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【後記】
この日、手術以来 初めて食べ物を口にしてくれました。自分から美味しそうに食べてくれたのは、8/22のカニカマ以来。それ以降はずっと口を ”くちゃくちゃ” させて気分が悪そうだったのに、手術してからは、まるで病気が治ったみたいに穏やかな日が続き、更に ちゅーる を美味しそうに食べてくれて。。。元気だった時と同じように 大好きな きゅうり もおねだりして、今思い返しても奇跡のような気がします。
日記にも書いてありましたが、この奇跡は、バリウムのことを悔やんでひよりに謝り続けていた私を、ひよりが気遣ってくれたために起こったんだと、私は思っています。猫ってそういうところがありますよね・・・。
(’19.1.11)
神様がくれた1週間<2日目> ・・・'18.9.2のこと。
↓前回です。手術の次の日なのに、ひよりは苦しそうな様子も無く穏やかにくつろいで過ごしてくれました。
久しぶりのうんち
手術から2日、朝起きるとひよりはクローゼットのタンスの上で丸くなって寝ていた。50~60センチほどの高さのタンスの上に、いつも通り上ることが出来たんだ と嬉しくなる。
ひよりが ちゃんと呼吸をしてスヤスヤと眠っている。今日も生きていてくれたことに感謝。朝から 夫と2人、布団の上でしばらく泣いてから なんとか涙を止めて起床する。
夜中のうちにうんちが出ていた。バリウムではなくて柔らかいコゲ茶色のうんち。うんちが出たことがこんなに嬉しいことはない。腸はまだふさがってないよね。バリウムだって通ったんだし、うんちと一緒に早くバリウムも出さないとね。
その後も、12時頃と14時頃に 水下痢のようなうんち。バリウムは出ていない様子。水下痢ってことはお腹痛いよね・・・。なんとかしてあげたい。バリウムを出し切るまでは下痢なんだろうか・・・。
私自身、健康診断でバリウムを飲んだ時、(キタナイ話ですが)それを出すのにとても苦労した。その時と同じ思いを 今ひよりがしているかと思うと心配で、不憫でたまらない・・・。
ひよりの声
少しの間、買い物に出かけて帰ってみると、ひよりはリビングにいて出迎えてくれた。体調を崩してから初めてのこと。
体調は悪くなさそうなのでブラシに誘ってみると、"ころん"をしてお腹を出してくれた。お腹の傷が痛々しい。今日いっぱい痛みを我慢できれば、あとは良くなっていくはず。早く痛みがなくなるといいね。
ひよりとお話ししながらゆっくりブラシをする。とても気持ちよさそう。元気だった頃みたいに、ブラシをカジカジ噛み始める。ころんころん と転がりながら、私を見て「にゃー」と鳴いた。
ここ1か月は、こんな元気そうなひよりを見ていなかった。「にゃー」と鳴く声も聞いていなかった。ひよりの声が聞けて嬉しい!ひより、痛みは無いの?くつろいでくれてるの?私に何か言ってくれたんだね。私はバカだから ひよりの言葉が分からないんだよ。『気持いいよ』って言ってくれたのかな?それとも『しつこいな。もういいよ。』かな?ひよりの言葉が分かるように、もっと勉強しなくちゃいけないね。
ひよりの「にゃー」が本当に嬉しくてビックリして「あはは」と笑っているのに涙が出た。
血便
20時頃、またうんち。相変わらず下痢をしている。血も混じっている。腫瘍から出血したのかな・・・。ひよりは元気に見えても これが現実・・・。
ひよりは おしりが気になるようで、床におしりを付けてズルズル前進し、おしりを床にこすり付けるような仕草をする。おしりをケガしてしまうんじゃないかと心配。
夫と2人で床を掃除しならがら、これから下血や吐血なんかもあるんだろうかと話し、不安になる。それ以降、何も話せなくなって黙って夫と床を拭いた。
ひよりは今夜もクローゼットで眠るようだ。
「おやすみ、また明日ね。」とあいさつして私たちも眠りについた。
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【後記】
夫はこれまで、泣いた顔を見せることがほとんどありませんでした。夫の母が亡くなった時に一度だけ涙を流したのは見ましたが、こんなに号泣する夫は初めてでした。悲しい映画を見ても涙ひとつ流さない夫に 私は、「もしかして冷たい人なのか?」という疑惑を持った事もありましたが、ひよりの事で こんなに号泣していたのを見て、この人にもちゃんと心があったんだと安心しました。その反面、夫が号泣すればするほど、ひよりとのお別れは現実なんだと実感することにもなり、複雑な思いになりました。
この日の日記は「うんち」のことばかりが書いてあり、人様に読ませて良いものかと迷いましたが、結局ありのままを書くことにしました。不快な思いをさせてしまっていたら本当にすみません。。。
日記には書いてありませんでしたが、この日の私は下痢をしているひよりを見て、ひよりが最後に口にしたものがバリウムになってしまったことを悔やみ倒していました。泣きながら何度もひよりに謝っていたのを思い出すと胸がきゅーっとなるのですが、この後ひよりの気遣いにより、私は救われることになります。
(’19.1.5)
【新年のご挨拶】平成最後のお正月。
新しい年になりました。
『平成最後のお正月』ですね。
年末は(わたし的には珍しく)バタバタしており、気づいたら今日は元日。まっさらな年が始まったのですね。早いものです。
テレビで何度も何度も『平成最後の〇〇』というフレーズが繰り返され、それを聞くたびに なんだか心がざわざわします。
昨年は、私にとって あまり良い年ではありませんでした。
1月早々に夫の母が亡くなり、そして夏の終わりには愛猫ひよりが亡くなりました。
私にとって大きな存在が、平成の時代とともにいなくなってしまった、という感じです。私のまわりでは色んなことが変わっていくのに、私はずっと同じ場所にいて、一歩も前に進めていないな・・・。そんなことを考えていると、どうにも心のざわつきが止まりません。
今年は、ぜひとも良い年にしたいものです。
さて、昨年 秋が始まった頃、思いがけずブログを始めて3か月あまり。愛猫ひよりが病気になってからの記録を綴ってきました。
当初はこんなにたくさんの方々に読んでいただけるとは思っていませんでした。そして、スターを付けて下さったり、コメントを書いて下さったり...。こんなに温かいホカホカのお気持ちをいただけるなんて。
本当にありがとうございます。
この記録が誰かのお役に立てれば・・・という思いと、そして私自身がひよりへの後悔を忘れないために・・・、私が背負った十字架を 時の流れとともに勝手に下ろしてしまわないように・・・と 始めたブログだったのに(自分で自分を責め続けようと思ってブログを始めたんです。ドSかドMか分かりませんね。)私は皆様の温かいお気持ちに触れるたびに、少しずつ十字架が軽くなっていくような気がしています。これでいいのかなぁ。
皆様の優しさが溢れすぎて、私、ひよりを辛い目に合わせた自分を 勝手に自分で許してしまいそうです。。。
これ以上書くと、新年早々とても後ろ向きなことを書き連ねてしまいそうなので、今日はこの辺でやめておきますね(笑)。
お伝えしたかったのは、
『昨年は本当にありがとうございました。今年もどうぞよろしくお願い致します。』
です(*^-^*)
ブログは今年も続きます。お時間の許す限りお付き合いいただけると嬉しいです。
皆様にとって新しい年が この上なくホッカホカでありますように!
「うちのダメ飼い主を よろしくお願いします。」
神様がくれた1週間<1日目> ・・・’18.9.1のこと。
↓前回です。病院から帰ってもパニック状態のひよりは、麻酔が効いた状態のまま もつれる足で押し入れに飛び込みました。私は心配で、朝までろくに眠れずに過ごします。
ここにいてくれることに「ありがとう」
早朝ウトウトして目を覚ますと、ベッドの脇で ひよりがきちんとお座りをして、じっと私を見ていた。
ああ、ひよりがいる。ちゃんとここにいる。ひよりを撫でながらこらえきれずに泣きじゃくる。いつの間にか目を覚ましていた夫も泣いていた。
それと同時に『やっぱり夢じゃなかった。ひよりはもう治らないんだ。』という絶望もやって来て落胆する。気持ちの整理がまだちっとも追いついてない。
しばらく夫と一緒に泣きながらひよりを撫でた。ひよりはそれに応えてねりねりと体を預けてくれる。ひよりの体温を感じながら、ひよりが今ここにいてくれること、この瞬間に生きていてくれることに、夫と2人で感謝した。
ひよりがリビングに移動するようなので、私も後を付いていった。寝室ではまだ夫が鼻をすする音が聞こえていた。夫はこんなに泣く人だったっけ。泣き顔なんてほとんど見せたことが無い夫が、堪えきれずに泣いている。私と夫にとって、娘同然の大切な存在であるひよりがもうすぐいなくなる、これが現実なんだ、と 、夫が泣く姿を見て思い知らされたような気がして 余計に苦しくなった。
ひよりはまだ焦点が合っていないようす。しばらく歩いてはぼーっと空中を見て、また歩き出す。痛みは48時間続くと先生は言った。ぼーっとしていてもいい。このまましばらく麻酔が効いて痛みを感じずにいてくれればいい。
3つの約束
夫が仕事に出かけるころ、ソファでひよりを膝に乗せてみると くつろいでゴロゴロ言ってくれた。このところのひよりは、体に触っただけで吐き気をもよおしていた。なのに今は膝でゴロゴロ甘えてくれている。こんなに穏やかなひよりは久しぶりで、嬉しくてこの時間を止めてしまいたくなる。
結局 夫が出掛ける時もひよりを膝にのせたまま動きたくなくて、夫には自分でお弁当を包ませ、水筒にお茶も入れさせ、玄関まで見送ることもせず、私とひよりはソファに座ったままで「行ってらっしゃい」をした。
今日はひよりの気が済むまで ひよりを膝に乗せていよう。ずっとひよりと一緒にいよう。ずっとひよりのそばにいよう。
膝にひよりを乗せながら、私とひよりは3つの約束を交わした。
①もう絶対キャリーに入れない(病院に行かない)。
②もう絶対食べ物を無理やり口に入れない。
③でも薬だけは許してね。
↑膝に乗ってくれたひより。まだ少し目がうつろ。
穏やかに過ぎる時間
今日のひよりは具合が悪くなることも無く、ソファやクローゼットなどに場所を移してはゆっくり眠っていた。
ひよりと2人で一緒にベランダを眺める時間もあって、穏やかに時間が過ぎる。外の景色にひよりが興味を示すなんて。
昨日まではぐったりと横になり、吐きそうに口をくちゃくちゃさせていたのに、昨日の手術を境に何か憑きものが落ちたように穏やかになったのが不思議でたまらない。
夕食の支度をする頃、ひより自ら私の膝に乗ってきてくれた。夕食の買い物に行かなければならない時間だったけど、ひよりが膝に来てくれたので動きたくない。今日はもちろん ひより優先。夕食は夫にお弁当を買ってきてもらうことに。
夫が帰宅した時、ひよりは膝でゴロゴロ甘えているところだったので、夫を出迎えることが出来なかった。今日は朝の見送りも、帰りの出迎えも出来なかったが、それでも夫は ひよりが穏やかにくつろいでいることが嬉しそう。夫は牛丼を買ってきてくれた。
ひよりはまだ少し目がうつろ。先生が言ったように、けっこう長めに麻酔が効いているようだ。明日が痛みとの本当の戦いなのかな。ひより、痛い目に合わせてしまってごめんね。ダメ飼い主でごめん。私も一緒に頑張るね。頑張って明日も一緒に乗り切ろう。
****************************
【後記】
腫瘍が取れない物だと分かった時、先生に提示された選択肢の中に「眠ったままで安楽死」というものがありましたが、私はそれを選ばず「家に連れて帰る」を選びました。 ひよりを家に連れて帰ると決めた時、病院の先生には「苦しむ姿を見ることになるかも知れませんよ」と言われ、「ああ また私のわがままで ひよりを苦しませるのだな...」という思いがよぎりました。ですが、そんな思いとは裏腹に この日のひよりは本当に穏やかに過ごしてくれて、こんな時間を作って下さった神様に感謝しました。
(’18.12.25)
前々回の記事「長い長い1日③・・・'18.8.31のこと。」に<通院の覚え書き>を追記しました。ご参考までに。
【番外編】ひよりのいない冬 ・・・今朝のこと。
皆さま、寒さが心にしみる季節に ツライ話題ばかりが続く このブログを いつも読んで下さりありがとうございます。
今朝、ふと思ったことがありまして…今回はいつもの日記風のブログをお休みして、番外編をお届けしたいと思います。よろしければお付き合い下さい。
寒くなってきましたね。もう完全に冬ですよね。
寒さがニガテな私は、厚手のセーターを着る日が増えてきました。
久しぶりに着るセーターをタンスから出すと、もれなく "ひよりの毛" が付いてきます。
猫のいるご家庭あるあるですかね。
我が家では "ひよげ" と呼んでいます。
今年の冬は…ひよりがいません。
こんなに寒くて寂しい季節を、もう乗り越えられる気がしない と思っていた時に 思いがけず 出てくる ”ひよげ ”。
なんだか寂しような温かいような・・・何とも言えない泣き笑いの気持ちになります。
「”ひよげ” を入れておくからね。」
今朝も、夫がスーツの下に着るニットのベストをタンスから出したら、”ひよげ” が1本付いていました。
いつもならコロコロで取り除くところだけど、今はもう、1本の "ひよげ" も捨てられなくて、夫には内緒で そっと付けたままにしておきました。
朝食を食べ終えて、ニットに付いた "ひよげ" に気づいたらしい夫。
こっそり見ていると、指先で大事そうにつまんでポケットに入れていました。
『ああ、私と同じ 泣き笑いの気持ちの人がここにもいる』と思ったら、ひよりのいない この冬をもう少し頑張ってみようと思うことができました。
ひよちゃん、私たちをどこかで見ていて "ひよげ" で元気づけてくれてるんだね。
手のかかる私たちでごめん。
「しっかりしてくださいよ。」
ありがとうね。ひよちゃん。
長い長い1日③ ・・・’18.8.31のこと。
↓前回です。ひよりのお腹には、"取り除けない腫瘍"があることが分かりました。 chatorajirushi.hatenablog.com
「怖かったね。痛かったね。ごめんね。」
15:46、先生から「ひよりちゃんが目を覚ましました」と連絡。
夫と2人、急いで迎えに行く。
ひよりは既にキャリーに入れられて、診察室の隅にいた。
殺気立った顔で、ヒゲのあたりを膨らませ、毛は逆立って真っ黒の目。私たちの姿には気づかない様子で空中を睨んでいた。
こんなひよりは初めてで、今日一日ひよりがどんな思いでここにいたのか、今どんな思いでそこにいるのかが、私の胸のあたりにゴツンと伝わってきて痛かった。
怖かったね。痛かったね。ごめんね・・・。早く家に連れて帰って安心させたい。抱っこしてたくさん謝りたい。
診察室で先生が、症状について色々説明してくれている。夫が熱心に聞いている。
がんは、小腸と大腸の間に出来ていて、この部分は切り取ることが出来ないこと。小腸と大腸は太さが違うので、もし切って繋げてもすぐに破れてしまい、余計につらい思いをさせてしまうこと・・・。
お腹を縫った糸は抜糸しなくていい糸で、縫い目は内側に隠れるように縫ったからエリザベスカラーは付けていないこと。
手術後の痛みとの戦いは48時間が勝負だということ。だから、麻酔も完全には覚ましていないから、明日も 朦朧としているだろうということ。
今の腫瘍の状態はかなり大きくなっていて、かろうじてバリウムが通るくらいの隙間しかないとのこと。今後は飲み物しか口にすることは出来ないだろうこと、もう食べ物は食べられないこと・・・。
診察室でヘタり込む
そして先生が言った。
「このまま1週間生きられるかどうか。」
1週間???
・・・・・???
・・・・・・・・???!!!
目の前が急に砂嵐のようになって、頭やほっぺがキーンと冷たくなっていくような感覚になり、足を踏ん張ってはみたものの、結局ザーッという音とともに視界が白黒に変わって 私は床にヘタヘタと座り込んだ。
夫が手を差し伸べてきたが それを掴むこともできず、座ったまま ”キーン” と ”ザーッ” が治まるのを待った。嗚咽も止めることが出来ず、もう先生の話は”キーン”という音越しに聞くしかなかった。
夫はがん治療の話を聞いているようだった。
先生は、リンパ腫ならよく効く抗がん剤があると言っている。「私の見たてでは”腺がん”だと思うのですが、確定診断には病理検査が必要です。病理検査に出してみて、もしリンパ腫だったら治療しますか?」と先生。
夫が「検討したいので、念のため病理検査をお願いします。」と答えている。
空中で交わされる会話をぼんやりと聞きながら、私はキャリーの中で殺気立ったひよりの顔を見つめ「もう ひよりをキャリーには入れない。病院には絶対に連れて来ない。」と誓っていた。
「ひよりの大好きなおうちだよ」
家に連れて帰ると、玄関に入ってもひよりは我が家だとは気付いていない様子で、相変わらず殺気立った表情で固まっていた。
「ひよちゃん、帰ってきたよ。大好きなおうちだよ。安心して。ゆっくりしようね。」声を掛けながらリビングに入る。
リビングに入ってキャリーを下すと、突然我に返ったひよりはパニック状態になり、キャリーの中で暴れて 扉を押し破るようにキャリーから飛び出した。そのまま もつれる足でダッシュして 押し入れの中に入ってしまった。
麻酔がまだ効いているのに、傷口は縫ったばかりなのに、とにかくダッシュで押し入れに向かっていった。
押し入れの上の段、タンスと壁の15センチほどの隙間が、ひよりが一番落ち着ける場所。上の段にのぼるのに少してこずり、足を滑らせながらも必死だった。よほど怖い思いをしたんだね。本当にごめん、ごめんね。こんな事になってしまって本当にごめんね。
ぼーっとしてても ひよりはひより
押し入れに入ったまま、ひよりは夜11:00頃になっても出てこない。
押入れを開けて様子を見ると、眠ってはいないようで目を開けてぼーっとしている。私のことが分かっているのかどうか、私を見ることもしない。なんだか ひよりじゃないみたい・・・。ひより、怒ってるのかな、もう嫌われちゃったのかな。あんなに怖い思いをさせて、私のこと もう信用できないよね。
今夜はこのままそっとしておこうと夫と話し、私たちも眠ることにした。
布団の中で眠ることもできず悶々と過ごすこと数時間、押し入れからひよりが下りる音した。
急いで布団を出て行ってみると、ひよりがぼーっとした表情で座っていた。
朦朧としてはいるけど、さっきまでの硬い表情は無くなっていて ”いつものひより” がそこにいた。ああ、ひよりだ。胸がいっぱいになる。
「ひよちゃん!」声をかけると、よろよろと立ち上がり私の足にねりねりと体を預けてくれた。ああ良かった。いつものひよりだ。うれしくて安心して、ひよりの体温が愛しくて泣けてくる。
ひよりは ぼーっとして目もうつろ。時々4つ足で立ったまま ぼーっと空中を見る。のろのろと動きだしてカーペットにごろんと倒れこみ、体をなでる私の手にもねりねりとしてくれる。そして急にねりねりを止めて、焦点の合わない目で空中を見る・・・。
まだ麻酔が効いているんだよね。痛みは無さそうでよかった。術後48時間は痛みがあるだろうと先生は言っていた。だからきちんと麻酔は覚まさせていないよ、と。
どうかこのまま痛みを乗り越えられますように。どうか明日の朝も "いつものひより" に会えますように・・・。
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【後記】
この日、ひよりのことが心配でたまらなかった私は、朝まで ひよりに付いていたかったのですが、その思いを振り払って一人で眠らせることにしました。なぜなら、ひよりは眠っていても ふと私に気づくと起き上がり、私の体に体重を預けて ねりねりを始めてしまうからです。私としては嬉しくてたまらなかったのですが、朦朧としたままそんな事を何度も繰り返してしまうのは、ひよりにとって良い事ではないはず。今夜は私の思いよりも、ひよりがゆっくり眠れることが大事、そう思いました。
ただ、寝室に引き上げてからも、これが最後のお別れになったらどうしよう、この判断を後悔したらどうしよう、と私は朝までろくに眠れずに過ごすことになります。
(’18.12.17)
<通院の覚え書き>
8/31 体重 3.2kg
再診 ¥500-
ソルラクト/Drip ¥4,000-
アモスタック/s.c(~10kg) ¥0-
メタカム/s.c(~10kg) ¥0-
レペタン/i.v ¥0-
全身麻酔 ¥10,000-
試験的開腹術 ¥25,000-
病理組織検査 ¥12,000-
エックス線検査(産科領域を除く) ¥6,000-
消費税 ¥4,600-
合計 ¥62,100-