長い長い1日② ・・・’18.8.31のこと。
↓ 前回です。触診で、ひよりのお腹に”何か硬い物”があることが分かりました。
「腫瘍でした」
ひよりのお腹にあるという”何か硬い物”・・・。腫瘍だったらどうしよう・・・。
先生からは開腹手術を提案され、私は迷わず了承した。結果が分かったら電話をくれることになっている。電話を待つ間「ネズミのおもちゃでありますように・・・」と祈る私と、「ひよりの病気は "がん" だったんだ・・・」と絶望する私が交互にやって来ていた。
15:00過ぎ、電話が鳴った。先生からだ。無意識に立ち上がって電話に出る。
先生は、開口一番「腫瘍でした。」と言った。続けて先生は説明してくれた。
「小腸と大腸のつなぎ目あたりに腫瘍ができています。もうかなり大きくて、腸を塞ぎつつあります。今はかろうじてバリウムが通れるくらいの隙間がある状態です。」
無言で話を聞く私を、夫が不安な表情で見ている。私はもう血の気が引いて立っていられず座りこんだ。先生は話を続けた。
「おそらく『腸腺(ちょうせん)がん』だと思います。病理検査をしないと確定診断はできませんが、おそらく私が見た限りリンパ腫ではない感じです。」
「腸腺がん・・・。」私がつぶやいたので、夫がパソコンで『腸腺がん』について調べ始めているようす。先生の話は続く。
「この小腸と大腸のつなぎ目は、絶対に切り取ってはいけない場所です。猫だけでなく人間の場合もそうです。残念ですが、このままお腹を閉じるしかありません。予定していた”胃ろう”も出来ません。もう食べ物は腸を通過できないでしょうから…。」
もう何を言われているのか頭が付いていかない・・・。
残酷な三択
そして、先生から思いもよらない三択を提示された。
「今後のことについて飼い主さんに決めてもらわなければなりません。これから3つの選択肢を言います。むごいお話ではありますが、落ち着いて聞いて下さい。」
私は涙をボタボタ垂らしながら 呼吸をすることに精一杯で、返事もできずにいた。先生に提示された選択肢はこうだった。
①積極的にがんを治療する。
②家で最期を看取る。
③このまま眠ったままで安楽死。
もう声も出せない状態だった私は、絞り出すように
「家に連れて帰りたい・・・・・!」とだけやっとの思いで答えることが出来た。
私の言葉に全てを察して 男泣きに泣く夫が 目の端にぼんやり映っていた。
(『長い長い1日③』につづく)
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【後記】
"胃ろう" を決心するまでに あんなに時間がかかったのに、結局 ”胃ろう” は出来ませんでした。色んな人に背中を押してもらって、ようやく決心した ”胃ろう” だったのに・・・。
異物や腫瘍なら取り除き、元気になるために ”胃ろう” をして帰ってくるはずでした。”胃ろう”さえすれば、また ひよりとの楽しい生活が戻ってくると思っていたのに、それ以外の『取り除けない腫瘍』(=命をあきらめる)という選択肢があったなんて思ってもいませんでした。この現実を目の前にして 夫と2人、しばらくは無言で泣きました。
元気になるために病院に行ったはずなのに、こんなに最悪な結果があるんだろうか。そうだ、きっとすぐに目が覚めて「あー、サイアクな夢見た!」って言うんだ。「夢で良かったねー!」って、ひよりと一緒に笑うんだ。
この日から数日間は、毎日そう思っていました。
(’18.12.12)