こころの穴は ねこのかたち。

~愛猫ひよりの病気のはなし。そして・・・ひよりのいない”今”を綴っています。~

”歩く”ひより ・・・‘18.9.17のこと①。

 ↓前回です。ひよりはとうとう倒れてしまいました。ですが、私はまだ事の重大さに気付いていません。

chatorajirushi.hatenablog.com

 

前回の記事で、当時 私が綴った日記は終わっています。ここからは記憶を頼りに、その後ひよりに起こったことを記していきたいと思います。

 

吐きたいだけだよね?

ひよりに「おやすみ」を言った直後、ひよりはまたすぐに起きて歩き出したかと思うと、寝室のドアの前でバタンと音を立てて倒れてしまった。深夜12時頃のことだった。

ひよりは こもった声で「んなー」と鳴いている。その日ひよりは1度も吐いていなかったため、私は「吐けばスッキリするよね?また落ち着くよね?」と考えていた。

リビングに嘔吐セット(嘔吐物を受け止めるトレーやティッシュペーパー)を取りに行くと、ひよりが「おーん」と大きな声で鳴いた。

「行かないでー」と言っているように聞こえた。「はーい」と私。

急いで戻って、ひよりに声をかける。

「ひより、吐いていいよ。吐いてスッキリしよう。」

ひよりは上半身だけを2本の前足で支えて、頭を上げてこちらを見ているが、なんだか様子がおかしい。黒目がやけに大きくて時どき眩しそうに目をパチパチさせている。

「ひより?」

 

見えてないの?

いつ吐いてもいいようにトレーをひよりの前に置いてみたけど、それにも気づいていない?トレーがひよりの体に当たってようやくそれに気付いたという感じ。もしかして見えてないの?不安がざわーっと押し寄せてくる。

オロオロうろたえる私。ひよりの名前を呼びながら頭を撫でることしか出来ない。

「ひより、ひより・・・。」

ひよりの名を呼びながら撫で続けて間もなく、ふとひよりの首から力が抜けるのが分かった。そして、首をかしげるように ゆっくりとひよりの頭が私の手のひらの中に沈み込んできて、ひよりは意識を失ってしまった。

「ひより!ひより、嫌だよ!」

”その時”が来てしまったんだ。ああ、本当に来てしまった。とうとう来てしまった。

ひよりの頬を手のひらに乗せたまま、私は目の前にある現実を否定する方法を まだ考えていた。

 

しっぽで応える「聞こえているよ」

「ひより・・・、ひより・・・」何度も呼び掛ける。意識を失ってはいるものの、呼びかけるとひよりは しっぽを小さくパタッと動かして応えてくれた。

ああ、ちゃんと聞こえてる。ひよりの耳に私の声はちゃんと届いている。

「ひより、ありがとうね。よく頑張ったね。色々苦しい思いをさせてごめんね。私のかわいいひより。大好きだよ。」

夫と2人で泣きながら何度も何度も話しかけた。話しかけては しっぽが動くことに安心して・・・を繰り返していた。

ひよりを撫でながらどれくらい時間が経っただろう。

ひよりのしっぽがふと動かなくなった。何度呼んでも動かない。耳はもう聞こえていないのかな?いや違う。心臓は力強く動いている。しっぽを動かすことが出来なくなっただけ。声はちゃんと聞こえているはず。

ひよりの隣に横になり、相変わらず私はひよりに話しかけ続けた。 

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「世界一好き」

 

こんな時までダメな私

そこで、おむつを付けたままだった事に気づいた。

ああ早く外してあげれば良かった!ごめんね気持ちが悪かったよね。

おむつを外して、ペットシーツをひよりの下に敷き、ひよりの体勢を整える。気付いてみると、ひよりの体の下にドアストッパーがあったり、ひよりの足が小さく曲げられていたり、ひよりは寝心地が悪かっただろうに・・・!早く気付いてあげれば良かった!後悔をたくさんしながら、ひよりを楽な体勢に寝かせた。パニック状態になると何も気づけない私。早く楽な体勢にしてあげれば良かった。こんな時までダメな私。嫌になる。

 

”歩く”ひより

深夜3時頃だろうか、おむつを外して手足を伸ばしてしばらくすると、ひよりは横になったまま手足をゆっくり動かし始めた。意識は無い中で、まるで歩いているようにゆっくりゆっくり手足を動かす。

こんなに歩いたら疲れちゃうよ・・・。手足を動かし続けるひよりが心配になり、撫でながら私が手足の動きを制すと、夫が言った。

「歩かせてあげよう。歩きたいんだよ。」

・・・そうか。ひよりはどこかへ行く途中だったんだもんね。歩いてどこかへ行こうとしてた。その途中で倒れちゃったんだ。そうだったね。行っておいで。ひより。

ひよりはそれからずっと ゆっくりと歩き続けた。

 

午前6時前、空がうっすら明るくなったころ、私たちはひよりと一緒に寝室からリビングへ移動することにした。ひよりの大好きなリビングのカーペットの上にひよりと一緒に移動し、ペットシーツを新しくしてひよりを寝かせる。寝そべって意識の無いまま、ひよりは早速歩き始める。ゆっくりゆっくり、一歩一歩・・・。

 

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【後記】

夫と約束していたことがあります。

『ひよりにもしもの時が来たら、「頑張れ」とか「行かないで」は言わないでいよう。もう充分 頑張ったから、引き止めるのはやめよう。』というものでした。

でも、ひよりが意識を失った時、私が咄嗟に言った言葉は「嫌だよ!」だったと記憶しています。どうしてもひよりと別れたくない私、勝手ですね。ひよりがしんどい体から解放される時に、まだ引き留めようとするなんて。でも、その時はすぐに反省して切り替えて、「ありがとう」と「世界一好き」を伝える事ができました。ひよりはそれに応えて、しっぽをパタッと動かしてくれました。

(’19.7.12)